年末年始になると、玄関に茅の輪(ちのわ)を飾るお家を見かける機会が増えてきます。
「茅の輪」というのはチガヤというイネ科の植物を束ねて作ったリースのことです。神社にお参りに行ったときなどに授与していただけます。
地域によって違いますが、1月15日ごろまでは玄関に飾って、心身のけがれを清めます。
今回は、よく見かけるけれど意外に知らない「茅の輪」について、その由来や処分の方法までを解説していきます。
正月飾りの由来について

茅の輪を飾る風習は、夏越の祓(なごしのはらえ)・大祓(おおはらえ)という行事からきていると思われます。
これは6月の最後と12月の最後に行われるもので、神社で大きな茅の輪をくぐって身を清め、けがれを落とします。
何ヶ月も生活していく中で、私たちの心身にも知らない間にけがれが溜まっていきます。そこで部屋を定期的に大掃除するように、茅の輪をくぐることで身と心の大掃除を行うというわけです。
自分自身をキレイにリセットすることで、これから始まる新しい年をすっきり新鮮な気分で始められそうですね。
実際に神社で茅の輪くぐりをすることもあれば、茅の輪飾りを頂戴して持ち帰り、玄関に飾ることで、身と心と家をキレイにすることもあるようです。
なぜ「茅の輪」なのかというと、次のような日本の神話に由来します。
昔、「スサノオノミコト」という神様が宿を探していました。
スサノオは蘇民将来(そみんしょうらい)という、あまり豊かではない者に宿を乞います。
すると蘇民将来は快くスサノオを受け入れ、とても丁寧に応対しました。蘇民将来の態度に感動したスサノオは、感謝のしるしとして蘇民将来に「茅の輪」を授けました。
この「茅の輪」のおかげで蘇民将来の子孫は繁栄していくことになったのです。
茅の輪をつくって玄関に飾る風習はこの神話に由来します。
家族みんなが健康で、子どもや孫たちが健やかに育っていき、みんなでおだやかに幸せに暮らしていきたい。
そんな願いを、神様の力が宿った茅の輪に託すというわけです。
ところで「茅の輪」のもととなっているチガヤですが、実はこれ、とても丈夫な植物なんです。
たとえ地上部分が焼かれても枯死しないといいます。
そんなたくましくて丈夫な「茅の輪」がわが家を守ってくれるなんて、とても頼もしいですね。
茅の輪などの正月飾りはいつから飾る?

「正月事始め(しょうがつごとはじめ)」という言葉があります。
正月を始める準備を迎えることで、12月13日に行います。つまり、茅の輪などの正月飾りも12月13日ごろから飾り始めるのが一般的だと言えます。
これは占星術に由来する話になりますが、12月13日は「鬼の日」です。
こう聞くと何か不吉なイメージがありますが実はこの日、何をするにもうまくいく日なのです。
なぜならこの日は鬼が出てくる日ではなくて、鬼が宿にいて外を出歩かない日だからです。
鬼に邪魔されないうちに茅の輪などを飾ってお正月の準備を済ませてしまいましょう。
茅の輪などの正月飾りはいつまで飾る?
正月飾りを片付ける時期は地域によっても違いますが、早い地域では1月7日までに、遅い地域だと1月20日ごろまでに片付けます。
この違いは、七草がゆをいただく7日を区切りとするか、小正月の15日を区切りとするか、または二十日正月(はつかしょうがつ)を区切りとするかで分かれます。
関東方面では7日を区切りとし、関西方面では15日や20日を区切りとするところが多いようです。
正月飾りには茅の輪以外にも門松やしめ縄、鏡餅などがありますが、これらも多くは茅の輪と同じようなタイミングで片付けます。
なお、破魔矢だけは1年間飾って家を守ってもらうようです。
茅の輪飾りなどの正月飾りの処分方法

正月飾りを片付けたら、次はそれを処分します。
最も一般的な処分の仕方は、神社へ持っていってお炊き上げをするという方法です。
これは「どんど焼き」と呼ばれる火祭りで、通常1月15日に行われます。
もちろん「どんど焼き」に行けない場合でも、神社に相談すれば別の日にお炊き上げをしていただける場合があります。
神社に持っていくのが最も確実で安心だと思いますが、どうしても行けないという場合もあると思います。
そんなときは自分でお清めをしてから捨てるという方法もあります。
処分する手順としては、
- まずは白い布の上に飾りを置きます。
- 次に、清めの塩を振ります。
- 最後に、飾りをそのまま白い布で包みます。
これだけです。
あとは新しいごみ袋に、他のごみとは分けて捨てるだけです。
特に難しい作法ではなく誰でもすぐにできると思いますが、少々間違えても、また普通に捨ててしまっても問題はないそうです。
大切なのは家を守っていただいたことに対して感謝の気持ちを持つことです。
何が何でもこの通りにしなければならないというものではありません。
決して雑に捨てることはせず、あなたなりの感謝の心を込めて、丁寧に処分してください。
まとめ

以上、「茅の輪飾り」などの由来から処分の方法までを解説してきました。
ところで、由来の説明をしたときに「夏越の祓(なごしのはらえ)」・「大祓(おおはらえ)」という言葉を出しました。
「夏越の祓」は6月30日、「大祓」は12月31日です。
「大祓」は大晦日で区切りがいいですね。
では、「夏越の祓」6月30日とは何なのでしょうか。
実はこれは1年の半分が終わったということでもあるのですが、陰暦(いんれき:昔のこよみ)でいうと夏の終わりに当たります。
厳しい暑さを無事に乗り越えることができたときです。そんな時に無事をお祝いし、茅の輪くぐりをして身を清めて玄関に茅の輪を飾るのです。
「大祓」は年末ですから、「夏越の祓」を終えてから半年がたっています。やはりそのタイミングでもけがれた身を清めてけがれを落とし、茅の輪を飾ります。
今でも私たちは家族そろって無事に新しい年を迎えられたら感謝の気持ちを表しますが、昔の人々は今のような便利で快適で衛生的な時代を生きていませんでした。きっと、半年や1年を生き抜いていくことは本当に大変だったのだと思います。
だから虫の声に夏の終わりを感じたら「茅の輪」で身を清め、朝夕の冷え込みに冬の始まりを感じたらまた「茅の輪」で身を清めていたのです。
昔の人はきっと自然の声にきちんと耳を傾け、節目を迎えるたびに無事に過ごしてこられたことに感謝し、身と心の大掃除を行っていたのでしょう。
あなたも今年は「茅の輪」を飾って、家族みんなで健やかに過ごすことができた幸せをかみしめてみてはどうでしょうか。作法は何も難しくありません。ただ、感謝の気持ちを込めればいいのです。

